2010年5月4日火曜日

悩ましい問題

短答過去問はH12-21枝2、H13-48枝2およびH21-53枝3で長いあいだ疑問が晴れないで悩んでいた。
いずれも権利が共有に係る場合に審判請求が単独(または一部の権利者のみ)でできるかを問う問題だが、

  • H12年とH13年の問題は共同出願違反した場合の拒絶査定不服審判請求について

  • H21年の問題は単独でした補正に対する補正却下決定不服審判請求について

と微妙に異なっている。


何が問題か:

条文上は権利が共有にかかる場合の審判請求は単独でできない(特132③)とされていながらも、H12年および13年の問題は「単独で請求できる」旨の解答である。

一方でH21年の問題は「共同で請求しなければならない」旨の条文に則した解答である。

これらの違いはどこにあるのか。


過去問集の解説:

  • H12年の解説では、拒絶査定不服審判の請求人適格は「査定を受けた者」(特121①)であるから、単独で出願して拒絶査定を受けたのはその出願人のみであり、当該出願人のみで審判請求が可能であり、逆に、共有者は請求人適格を欠くという(審判便覧61-02参照)。

  • 一方でH21年の解説は、特132③の条文どおりというサラッとしたもので詳細は載っていないが、前述の論理を当てはめると、準意47①でも請求主体を「却下の決定を受けた者」と規定しているから、こちらの問題も単独請求可となるように思える。

  • そこでH13年の解説を見ると、特132③は権利が共有に係る場合に共同して審判を請求することを義務づけたもので、共有に係るか否か争いのあるこの枝のケースでは当該条文を適用するのは妥当でないということである。

  • この論理をH12年の問題に当てはめると、当該枝では「甲、乙の共有に係る特許権につき」と特許権が共有に係る旨が明言されているから、特132③が適用されて単独請求不可となるように思う。


自分なりの解釈:

結局、短答を解くうえでのはっきりとした基準が見えないので、次のように理解することにした。
  • H21年の問題は、補正手続自体は単独でできる(特14反対解釈)ものであるから適法であり、出願が共同でされている限りは「却下の決定を受けた者」は共有者全員になる。したがって、補正却下決定不服審判の請求は共有者全員でしなければならない。

  • H13年の問題は、権利が共有に係るか否かに争いがあるが、出願を単独でしているので特32③は適用せず、単独請求可能とする。

  • H12年の問題は、出願手続が単独でされている以上は特132③の範疇ではなくなり、単独請求可というか単独請求しかできない。

即ち、権利が共有に係る場合に審判請求が単独でできるか否かは出願を単独でしたかどうかによる

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